本研究では、被害が懸念される排出事業所近傍での人へのリスクや事業所による環境汚染の状況を、事業者や行政らが得られる情報や少ない実測値から効率的に把握・評価できるように、PRTR排出量データと経産省METI-LISモデルを活用し、リスク評価が必要な優先評価事業所やモニタリング地点の決定方法、効率的な評価手法について提案することを目的とした。平成19年度は、主に下のような研究を実施して成果を得た。なお、研究成果はSETAC 5th World Congressにて発表するとともに、論文投稿も準備中である。 1)METI-LISモデルを活用した効率的な大気汚染モニタリング手法 ・前年に引き続き、モデル予測濃度と実測濃度とを比較し、モデルの妥当性を検証するとともに測定地点選定方法の妥当性について検討した。同じ方角であれば、予測濃度と実測濃度とは相関式で表すことができることが明らかになった。アメダスデータでは把握できない、方角毎の詳細な風向、風速等の影響が大きいことが示唆された。 ・実測した気象データを用いることにより、実測していない地点の濃度を、少ない実測濃度を用いて精度良く補間できることが分かった。特に同じ方位であれば精度良く予測できた。また、ある一週間の測定結果から年平均濃度を0.5〜1.4倍の精度で予測可能であることを示した。 2)PRTRデータ解析による優先的に評価すべき事業所の選定方法 ・前年に引き続き、優先的に評価すべき事業所の選定方法を提案し、排出事業所近傍での実測結果から妥当性を確認できた。環境省の調査では揮発性有機化合物の環境基準は達成とされているが、PRTR排出量の比較的大きな事業所周辺の住宅地において、環境基準等を超えるレベルで測定される事例を複数見いだすことができた。また、事業所近傍の汚染の把握方法、測定結果に応じた対策目標設定の考え方を整理することができた。
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