京都議定書の第1約束期間を目前に控え、地方自治体においても地球温暖化対策の策定・実施が求められている。本研究は通常用いられる領域原則にもとづく二酸化炭素排出量をもとに各都市が削減目標を設定することが適切であるかどうかを検討するために、東アジアのさまざまな経済発展レベル、産業構造の都市を対象に、産業連関分析によるエネルギー消費、二酸化炭素排出構造分析を行うものである。初年度である2005年度は、以下の3つを行った。(1)工業都市(北九州市)とサービス都市(福岡市)を取り上げて、直接CO2排出量と間接CO2排出量、責任CO2排出量を算定して比較した。また、(2)北京市と東京都の貿易量を推計して、両者がそれぞれの都市において誘発する経済効果とCO2排出効果の比較を行った。(3)直接、間接のCO2排出構造の時間変化を分析するために、北京市において産業連関表を用いた要因分解分析を行った。 以上より、(1)一般に、工業都市では直接CO2排出量は大きいが、間接CO2排出量や責任CO2排出量などを考慮すると、サービス都市のほうが大きい場合があることが分かった。(2)東京は北京にとって需要者としての性格が強いのに対し、他地域日本は北京にとって供給者としての性格が強い。従って、北京は東京向け輸出によってより大きな誘発効果をもたらしているということが分かった。また、誘発された生産額に伴って発生したエネルギー消費と排出量は、日本側よりも北京のほうがより深刻で規模が大きいことが分かった。(3)北京市の排出量変化は1992年から1997年までは最終需要の中で投資・輸出が増加することによるものであるのに対し、1997年から2002年までの間ではサービス業に対する内需の増大によるものが大きいことが分かった。
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