アジア開発途上国の特質に合致し、かつ受容可能な、計画段階での環境影響評価のアプローチ方法を検討することが、本研究のテーマである。 平成17年度は、アジア開発途上国での事例を検討するために必要となる、先進諸国における土地利用計画への戦略的環境アセスメント(SEA)制度の情報収集とその実施状況の文献、ヒアリング調査を行った。イングランドにおいては、EU-SEA指令以前より土地利用計画の際に「持続可能性評価」を行っており、この持続可能性評価をSEA指令の要件に合致するように変更し、新たなSEA制度を確立した。オランダにおいては、SEA指令以前のSEA制度はEIAプロセスに準拠した厳しいものであったが、新たな制度は適用される土地利用計画の範囲を拡大し、SEAの条件は緩和される方向である。ドイツは、以前から土地利用計画策定時に環境影響評価を行っており、SEA指令の国内法化以降も実質は変化していないとのヒアリング結果であった。また、イングランドに関しては、ローカルレベルの土地利用計画へのSEA適用状況を、ロンドン内及びその周辺自治体にヒアリング調査を行った。なお、欧州の土地利用計画への新しいSEA制度は各国でまだ開始されたばかりであり、18年度も引き続き研究を行い、その結研究成果を内外に発表する予定である。 また、我が国の自治体における計画段階での環境配慮制度に関する調査を行い、その研究成果を内外に発表した。わが国の一部の自治体で導入されている計画段階での環境配慮制度は、SEAと比較して、経済・社会面と環境面での影響の比較考慮、透明性・参加が不足していることが明らかになった。 来年度は、引き続き先進国における戦略的環境アセスメント制度に関する研究を続け、SEAの体系化の作業を行うと同時に、タイにおける環境評価制度、土地利用計画制度の現況と課題に関する研究を行う予定である。
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