本研究の目的は、CDMプロジェクトの活用を妨げる要因としてホスト国における不確実性問題や取引費用の問題を取り上げ、ホスト国の観点からCDMの利用を促すための制度設計を構築することであった。具体的には、第1に、ホスト国の持続可能な発展に寄与することの客観的かつ検証可能な指標を構築することであり、第2に、CDMプロジェクト実施においてホスト国との交渉で発生しうる取引費用を安くできるような制度設計を構築することであった。 1年目の2005年度は、日本と韓国で実際に行われた「ウルサン化学HFC23熱分解事業」を調査することにより、ホスト国である韓国の持続可能な発展にどのような貢献をしたか、またプロジェクトの実施に伴って発生する取引費用に関するデータが得られたことは大きな成果である。また、同プロジェクトを追加性や持続可能な発展への影響を考慮しながら詳細に分析し、事業全体についても評価を行った。結論的には、ウルサンCDMプロジェクトは日韓の環境分野における協力の可能性を大きく発展させたにもかかわらず、事業対象がHFC23であったため、地球温暖化全体の議論から見ると必ずしも望ましいとはいえない事業であった。 このような問題を解決するためには、投入資金あたりのCERの獲得量が多いかつ同国内で同様なプロジェクトの対象施設が限られている場合(たとえばHFC23回収・熱分解事業)は、その収益の一部をホスト国の同様な施設に再投資して温室効果ガス事業を行うことが必要である。この場合、CDMプロジェクトして認定され、CERを獲得できるのは1つあるいは2つの対象施設に制限される。そのためには投資国の企業からの完全な技術移転とホスト国あるいはCDM基金からの追加的な資金の投資も必要である。
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