1.ナノ素材の経気道曝露が、肺での炎症に伴う血液凝固・線溶系に及ぼす影響 細菌毒素の経気道曝露により、コントロール曝露と比較して肺での接着分子の発現が明らかに惹起された。また、細菌毒素の曝露により、コントロール曝露と比較して血液凝固系のみならず線溶異常が明らかに惹起された。ナノ素材と細菌毒素との併用曝露は、細菌毒素成分の単独曝露と比較してこれらの、肺での接着分子発現及び血液凝固線溶異常を明らかに増悪した。その増悪程度は、最も小さなナノ素材と細菌毒素成分との併用曝露において顕著であった。 2.ナノ素材の経気道曝露が、肺での炎症に伴う血液凝固・線溶系に及ぼす影響のメカニズムに関する研究 cDNAマイクロアレイでの検討にて、ナノ素材と細菌毒素との併用曝露は、細菌毒素の単独曝露と比較して、肺における発現レベルが変動(増加・減少)する遺伝子が顕著に多く認められた。それらの遺伝子の中には炎症に関わる分子や、凝固線溶系に関わる分子が多種含まれていた。 以上の成果から、ナノ素材の経気道曝露は、肺での炎症によって誘発される血液凝固線溶異常を増悪しうることが明らかとなった。また、ナノ素材による炎症や血液凝固線溶異常の増悪は、遺伝子転写レベルでも確認できた。
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