今年度も昨年度に引き続き研究実施計画に沿って、実験材料にゼブラフィッシュを用いた水質汚染評価法の確立を目指し研究を遂行した。併せて今年度より研究代表者が北海道大学大学院水産科学研究院に所属が変わったため、本研究のフィールドでの応用も視野に入れ、北海道の河川に産卵遡上するシロザケ(Oncorhynchus keta)についても一部解析を行った。アラスカ湾で採集されたシロザケ嗅上皮を4%パラフォルムアルデヒド液にて固定、パラフィン包埋切片を作製した。得られた連続切片に対し、昨年度作製したゼブラフィッシュ嗅神経特異タンパクolfactory marker protein(OMP)および薬物代謝第II相酵素の一つグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)のアイソフォームの一つGSTπに対する既存の抗体をそれぞれ用いた免疫染色を施行した。その結果、シロザケにおいてもゼブラフィッシュ同様、二型ある嗅細胞のうちOMP抗体により線毛性嗅細胞が、GST抗体により線毛性および微絨毛性の両タイプの嗅細胞が検出可能であることが明らかになった。寒冷地である北海道ではゼブラフィッシュの大量周年繁殖が困難であることから小売業者から入手した観賞用ゼブラフィッシュ成魚個体を用い、家畜し尿汚染モデルとしてアンモニアの短期暴露飼育実験モデルを作成し免疫組織化学的解析を行った。その結果、実験群の嗅細胞でGST発現が強い傾向が認められたが、その個体差が大きく今年度の小規模の実験では有意な差は認められなかった。
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