近年、エピジェネティックス機構の異常は癌抑制遺伝子の不活化機構の一因と考えられており、癌の発生及び進展に重要な役割を果たしていると考えられている。特に、癌抑制遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのシトシンのメチル化がその遺伝子の発現抑制に重要な役割を果たしている事が知られている。本研究では、ゲノム全体から高頻度にメチル化されているCpGアイランドを探し出すための、抗メチル化シトシン抗体を用いたゲノム沈降法の開発を目的とする。 本年度行った内容は以下の通りである。 (1)ゲノムの抽出からクローニングまでの一連の操作の系を確立した。本研究開始当初、ソニケーション又はハイドロシェアーを用いて物理的にゲノムの切断を行っていた。しかし、物理的な切断の場合、切断端が均一ではない、多くのゲノムを必要とする等のいくつかの問題点があった。また、クローニングを行う際には、ゲノムの末端を修飾する必要があり、クローニングに関しても簡便な切断方法とは考えられなかった。そこで、制限酵素による切断を行うことにした。 (2)ゲノム沈降法の条件検討を行った。メチル化Cを多く含むゲノム断片を回収するためには、厳密な条件検討が必要であり、現在継続中である。ゲノム沈降後に得られたゲノム断片をクローニングし、シークエンス解析を行っている。今までのところ、とりわけメチル化Cの多い断片は得られていない。今後、さらに条件検討を継続して行う必要がある。 現在、ゲノムの切断→ゲノム沈降法→クローニング→シークエンスまでの一連の操作は滞りなく行える状況である。ゲノム沈降法の最適条件を見つければ、メチル化Cを多く含むゲノム断片を単離できる可能性は極めて高い。
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