近年、環境への配慮から産業廃棄物・排水の排出規制が一段と厳格化しており、これらの適正な処理に多くの企業がコストと手間をかける時代となっている。 申請者は高濃度の糖が存在する厳しい条件下で生育できる微生物の探索を行い、幾つかの環境試料から高濃度糖を含む無機塩培養液で良好に生育する酵母を分離した。そこで本研究計画では、分離株の生化学的および生理学的解析を行うとともに、分離株が産業排水の浄化に利用可能かどうかについて検討を行うこととした。 本年度は、以下の事項(1)(2)について成果を得ることができた。 (1)分離株OK1-3の生育動態 昨年度の研究で得られた分離株OK1-3の生育に対する培養温度の影響について検討した。その結果、分離株は20〜35℃で生育し、生育至適温度は130℃であった。35℃以上になると生育速度が低下し、40℃では全く生育が見られなかった。分離源は亜熱帯であるにも関わらず、分離株は中温菌であることがわかった。 (2)分離株OK1-3の系統解析 分離株の18Sおよび28SrDNAの配列を詳細に解析したところ、OK1-3はZygosaccharomyces mellisに最も近縁であることがわかったが、ITS-1および-2領域の配列がmellisとは大きく異なり、これまでに報告例のない種であることが強く示唆された。炭素源資化能にもmellisとは若干の相違が見られ、ガラクトースに対する資化能が陽性であった。
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