研究概要 |
バンドギャップが約4.9eVのワイドギャップ半導体であるなどの理由により透明電極やガスセンサとしての応用が検討されている酸化ガリウム(β-Ga_2O_3)薄膜への不純物添加をRFマグネトロンスパッタ法により試みた.β-Ga_2O_3薄膜は光吸収係数の測定を行なうためにSiO_2基板上に作製した.Ga_2O_3焼結体をターゲットに用い,RFマグネトロンスパッタリング装置を用いてArとO_2の混合ガス雰囲気で製膜した.また不純物添加の影響を調べるため,ターゲット上にSiとGeの小片を置き,膜中に導入した.製膜時間は10分間とし,スパッタ中の背圧は2Pa一定とした.試料は室温でスパッタ後,400℃から800℃の熱処理を行い結晶化させた.作製した試料の光吸収特性を分光光度計により測定した.これまでに,スパッタ雰囲気や熱処理温度など,製膜条件の違いによるβ-Ga_2O_3膜の表面状態やXRDパターンについて検討し,室温スパッタ後に不活性ガス雰囲気で熱処理することで,平坦かつ多結晶のβ-Ga_2O_3薄膜が形成されることを確認した.そこで次に不純物添加を試み,β-Ga_2O_3膜の光学特性に与える影響について評価した. XRD測定結果から,熱処理温度が600℃の場合に回折強度が最も大きくなり,結晶性が優れていると考えている.そこで,600℃で熱処理を行った試料について,光吸収測定からフォトンエネルギー(hv)の対(αhv)^2プロットしたものをfig.1に示す.600℃で熱処理を行った無添加β-Ga_2O_3薄膜の光吸収特性から見積もったバンドギャップの大きさは,約4.9eVだった.不純物を添加した試料のバンドギャップは,いずれも5.3eVであり,高エネルギー側にシフトしている.この原因は定かではないが,不純物添加によるバルク中の格子歪が原因と予想しており,現在検討している.また不純物添加によって吸収端以下のエネルギー領域においてfig2に示すように,それぞれの試料に特異な吸収が現れた.Si添加及びGe添加試料それぞれで,4.2eV及び3.6eV付近にピークを持っており,不純物添加により形成された準位と考えられる.
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