研究概要 |
二つのテーマに取り組んだ。(1)酸化物界面において余分な酸素や酸素原子位置の僅かな違いが物性を変えることが知られている。一方、銅酸化物高温超伝導体,Bi2212,では、銅と頂点酸素との距離が空間的に変化し、それと反相関するようにエネルギーギャップも空間的に変化することが観測されている。この反相関の起源が、頂点酸素と面内酸素のポテンシャル差にあることを見出した。数値シミュレーションを用いてポテンシャルの空間変化を解析し、頂点酸素と面内酸素と共有結合性がギャップの空間変化を与えていることを明らかにした。この結果は、高温超伝導体の超伝導転移温度の物質依存性とも起源を同じくしており、酸化物の物性制御において酸素原子の重要性を示している。(2)強磁性体を介したジョセフソン接合におけるスピンダイナミクスと超伝導電流との交差相関効果を調べた。マイクロ波照射によって磁化の歳差運動が引き起こされているときの超伝導電流に対する応答を計算した。そのために、磁化の運動方程式と超伝導秩序変数の位相に関する運動方程式とが結合した模型を提案した。そして、マイクロ波の周波数が強磁性共鳴条件を満たすとき、電流電圧特性にステップ構造が現れることを示した。この現象は交流電場によって現れるシャピロステップと呼ばれる電流電圧特性と類似しているが、我々の得た結果はスピンダイナミクスによって起きている点が異なる。この結果は、スピンダイナミクスと超伝導電流との交差相関効果の研究への発展が期待できる。
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