現在、先端LSIに用いられるMOS電界効果トランジスタのサイズは、すでに100nmを切っており、量子効果を含んだ素子動作モデリングが必要とされている。この現状を踏まえ、17年度は、これまでに開発した量子格子気体法シミュレータを用い、微細素子構造中の電子波伝播解析を行った。 まず、Si/SiO_2界面に凹凸がある場合のMOSFETのゲートリーク電流を解析した。通常のトンネル電流モデルでは、トンネル確率は界面垂直方向の運動量のみの関数と仮定される。しかし、平坦でない障壁界面の場合、界面平行方向の波数に依存してトンネル確率が増幅されることが明らかとなり、そのメカニズムに関する考察を行った。入射側界面の凹凸による入射波の散乱がトンネル確率増幅の主要因であり、一方で、出射側界面の凹凸はそれに対しあまり影響を及ぼさないことが分かった。 さらに、ポテンシャルの時間揺らぎが現実デバイス動作に及ぼす影響を解析した。これまで、高濃度にドープされたデバイス領域内ではプラズマ振動のため高周波域において100meV程度の電位揺らぎ生じていると指摘されている。今回、この影響によってソース・ドレイン間のトンネル電流がどのように変化するかを解析した。シミュレーション結果から、電子のトンネル時間と電位揺らぎの周期に依存してトンネル透過係数が変化することが分かった。低ドレインバイアス領域においてはプラズマ振動の影響が無視し得ないことを指摘した。
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