アルミニウム陽極酸化膜の均一な直線上細孔を鋳型として、陽極酸化膜の細孔の内壁のみに炭素を堆積させてから、陽極酸化膜を溶解除去し、注意深く洗浄することで、一端が閉じ、他端が開いた試験管状のナノカーボンを得ることができた(直径10nm)。また、鋳型の調製条件を変えることで、長さを0.5〜10μmの範囲で制御して試験管状ナノカーボンを調製したところ、長さ5μm以下の試験管状ナノカーボンは、何の後処理を行わなくてもに容易に水に分散することが分かった。一般に炭素は疎水性であるので、水に分散しにくい。例えばカーボンナノチューブを水に分散させるためには、酸処理など様々な後処理を施すことや界面活性剤などを多量に投入することが必要であり、本研究の結果は非常に興味深い。この試験管状ナノカーボンを詳細に分析したところ、表面に含酸素官能基が存在していること、ナノカーボンの表面が負に帯電していることが分かった。つまり、含酸素官能基が存在することで表面が親水性になり、また官能基の一部が水中でイオン化するために電気二重層が形成されて互いに反発しあい、分散すると考えられる。また、この含酸素官能基が生成する原因を調べたところ、鋳型の除去過程において生成した可能性が高いことが分かった。本研究で調製したナノカーボンの結晶性は低く、反応性が高いので鋳型の除去によって露出した表面は非常に酸化されやすいと考えられる。このため、後処理を行わずとも鋳型を除去するだけで含酸素官能基が多く生成し、試験管状ナノカーボンは水に分散するのであろう。 また、このナノカーボンが極性溶媒-非極性溶媒の液液界面に集合しやすい性質をもつことを見出だし、この性質を利用してナノカーボン1本分の厚さをもつ薄膜を基板状に製膜出来ることを報告した。
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