前年度(17年度)においては陽極酸化膜のナノー次元細孔(直径約15nm)にカーボンを堆積させてから、陽極酸化膜を溶解除去することで取り出したナノカーボンを注意深く洗浄することで、一端が閉じ、他端が開いた試験管状のナノカーボンを得、それが何の後処理を行わなくてもに容易に水に分散することを明らかにした。バイオ分野での応用を考慮した場合、生理食塩水中で分散することが必要であるが、本研究で調製した試験管状ナノカーボンの水分散性は生理食塩水中で分散するほど高くはなかった。そこで簡便な方法で分散性を向上させる試みを行った。試験管状ナノカーボンを過酸化水素水に浸漬することで表面酸素官能基の量が増大し、ゼータ電位の更なる低下や臨界凝集イオン濃度の上昇が確認され、水分散性が向上したことが分かった。しかしながら、生理食塩水中では依然として分散状態を維持出来るほどではないので、引き続き処理条件の最適化等の研究を行っている。また、水分散性試験管状ナノカーボンに磁性体を内包させて、磁場に応答するナノカーボン試験官の調製を目的とした研究を行い、直径35nmのナノ試験管の内部だけに磁性粒子を内包させることに成功した。しかしながらこの試料は水に分散させることが出来なかった。そこで上述の過酸化水素処理を行ったところ、純水中で分散させるこが出来た。以上の成果の一部は2006年12月に北海道大学で行われた炭素材料学会年会にて口頭発表を行った。また、2007年7月にアメリカ、シアトルで行われる予定の国際炭素材料学会にて発表予定であり、学術誌への投稿を準備中である。
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