研究概要 |
β鉄シリサイドはバルクでは間接遷移型半導体であるが、Si基板上にエピタキシャル成長すると、〜1.5μmのエネルギーバンドギャップをもつ直接遷移型半導体になるという報告がある。そのため、IV族系半導体の発光素子材料として、有望視されている。しかし、Siとβ鉄シリサイドの格子不整合が大きいため、格子不整合転位の少ない良質なβ鉄シリサイド薄膜を作成することは困難である。そこで、我々は、Si基板上のβ鉄シリサイドナノドットに注目した。ナノドットにおいては、その形状と微小サイズであることから、格子不整合による歪が不整合転位なしで緩和している。そのため、転位の少ない良質な微結晶をSi基板上に形成できる可能性がある。また、量子閉じ込め効果により、発光効率の増大が期待できる。 今年度、我々は、Si基板上に超高密度(>10^<12>cm^<-2>)β鉄シリサイドナノドットを形成する技術の開発を目的として研究を行った。我々は、すでにSi,Geのナノドットを超高密度にSi基板上に形成技術を開発している。それは極薄Si酸化膜上にSi,Geを蒸着することによってナノドットを形成する方法である。我々はそれを応用することで、β鉄シリサイドナノドットを形成することを試みた。具体的には、極薄Si酸化膜上にSiとFeを同時蒸着することで、鉄シリサイドナノドットを形成した。蒸着速度、蒸着速度比、蒸着基板温度、蒸着量のパラメータを様々に変え、β鉄シリサイドナノドット形成の最適条件を見出した。その結果、SiとFeの蒸着速度比、2:1、蒸着温度、500度で蒸着するという条件がβ鉄シリサイドナノドット形成の最適条件であることがわかった。この条件で形成したβ鉄シリサイドナノドットは平均5nmの直径であり、ドット密度は〜10^<12>cm^<-2>と超高密度である。また、このナノドットの断面透過電子顕微鏡観察により、ナノドット中にほとんど不整合転位が存在していないことがわかった。これらの研究成果は現在、学術雑誌に投稿中である。
|