1μm×1μm×1μmの3次元解像度の達成を目標にして、MRI顕微鏡の開発を行なっている。より高い解像度を得るためには、信号雑音比の向上が最重要である。そこで、超低温、高磁場の極限環境を駆使し、高い信号雑音比の達成を目指している。また、新たなパルス系列や強磁場勾配を開発することで、スピン拡散の効果の抑制も行っている。開発の第一段階として高磁場と強磁場勾配の影響を議論するため、以前に^3He-^4He混合液体の相分離界面を超低温MRIにより可視化したときに使用した試料容器を用い、実験を行なった。今回は磁場を0.33Tから0.92Tに高め、磁場勾配を0.25T/mから0.5T/mに向上させて、以前の画像と高磁場・強磁場勾配下での画像の比較を行なった。十分に3重臨界点から低温である温度領域(0.8K以下)では、^3He-^4He混合液体の相分離界面はきわめてシャープであると考えられる。そこで、相分離界面により解像度を評価すると、以前に得られた2次元解像度25μm×25μmを、6μm×6μmに改善できたことが分かった。しかし、高磁場化によって得られた信号雑音比の向上は、予想されていた6倍ではなく、3倍程度にとどまった。これは、共鳴回路中に存在する低温から室温にかけての長い同軸中のロスによるものではないかと考えている。また、強磁場勾配により信号のスペクトラムが広がるため、H_1のバンド幅による信号の歪みを受け、結果として画像(特に試料容器近傍)が歪むことが分かった。この問題点を解決するような新しい試料容器を現在準備中である。この容器では、直径200μmの細いチューブ内の相分離界面を可視化する。そのため、界面位置の正確な制御が重要となり、ポジショニングシステムの導入を行なった。そして、新しい試料容器を用いたより高い解像度を持つMRI顕微鏡により、^3He-^4He混合液体の相分離界面が試料容器となす接触角の精密測定を行なう予定である。
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