研究課題
DNAは、10年ほど前に電荷移動特性が見出されてから、ナノテクノロジーを構築する分子素子の一つとして注目されている。DNA二重鎖は、直径2nm程度の大きさをもつ二重らせん構造を形成し、また、塩基配列を巧妙に設計することにより、分岐・接合等の加工が容易であるため、非常に簡単に高次構造を作成することが可能である。従って、非常に有用なナノ素子としての可能性を充分に持っているが、現時点で実際の材料として利用するためには、持つべき機能が未だ不充分である。本研究では、DNA三重鎖構造という特異な構造を利用して、DNA上電荷移動反応の可逆的なオン・オフスイッチの開発を試みた。その結果、低温条件下では三重鎖形成に伴い電荷移動が効果的に抑制される一方で、昇温すると三重鎖から二重鎖への解離により電荷移動が効率よく進行するシステムの構築に成功した。また、本研究では、電極上に二重鎖DNAを固定化し、DNA上を流れる電流の直接測定を試みた。光酸化剤としてアントラキノン部位をもつDNA二重鎖、または三重鎖を金電極表面にチオール基を介して固定し、紫外線(365nm)照射下における電気化学的応答を評価した。その結果、15℃で二重鎖固定化電極に紫外線を照射した場合、DNA中のホール移動に起因する光電流が検出された。一方、三重鎖固定化電極においては、二重鎖の場合と比較して電気化学的応答が著しく低下することが明らかとなった。さらに、温度変化により三重鎖形成を制御し、電気化学的応答の可逆的スイッチングを検討した。三重鎖固定化電極に低温で紫外光を照射した場合は応答が小さく、昇温すると三重鎖の解離に伴う光電流の増加が確認された。続いて冷却すると、再び電気的応答は小さくなったことから、金電極上においても、三重鎖形成効果によるDNA上電荷移動の制御が可能であることがわかった。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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