研究概要 |
ペプチドの自己組織化によるナノファイバー・ナノネットワークの構築は、生体適合性・生分解性を有する新規環境調和型ナノ材料として幅広い応用が期待されるとともに、アミロイド形成に関する重要な知見も提供する。本研究では、ペプチド間ならびに核酸塩基間の特異的相互作用を利用して、形状特異的な三次元Nano-Scaffoldを自己組織的に構築する分子システムの開発を目的としている。本年度は自己組織化の分子素材となるβ-シート性の両親媒性ペプチドならびにその末端を核酸塩基で修飾したペプチドを新規に合成し、種々の環境下における二次構造ならびに自己集合特性を検討した。具体的な成果は以下の通りである。 (1)ロイシン(L)およびリシン(K)からなるトリブロック型両親媒性ペプチド(L_4K_8L_4)ならびにそのN末端をアデニンまたはチミンで機能化した核酸塩基修飾ペプチド(L_4K_8L_4-Ade,L_4K_8L_4-Thy)の合成に成功した。 (2)水中におけるL_4K_8L_4-AdeおよびL_4K_8L_4-Thyの二次構造特性をCD, UV, FTIRから明かにした。いずれのペプチドも低pH領域ではランダムコイル構造として存在するが、Lys側鎖のアミノ基のpK_a付近(ca.9)では、α-ヘリックス構造から逆平行β-シート構造へ自発的な構造転移を示すことがわかった。この際、核酸塩基に基づく吸収の淡色効果が観察され、核酸部位が二次構造変化に伴い規則的に配列することが明らかとなった。 (3)AFM測定からL_4K_8L_4-Adeの集合形態を検討した結果、β-シート構造への構造転移に伴って直径約5-6nmの左巻きの繊維状集合体(核酸塩基修飾ナノファイバー)に自己組織化することが明らかとなった。またナノファイバーのヘリカルセンスは構成アミノ酸のキラリティーに起因することもわかった。
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