2005年度は、標準的な基板としてGaAs(100)面を用いて実験を行った。基板表面に形成されたGa液滴に、強度を制御したAs分子線を供給し、結晶化後に形成されるナノ構造の形状について詳細に調べた。基板温度を一定にして、約2桁の範囲でAs分子線強度を調節したところ、量子ドット(As:2x10^<-4> Torr BEP)→一重量子リング(As:1x10^<-5> Torr BEP)→同心二重量子リング(As:2x10^<-6> Torr BEP)と、形状の大きく異なるナノ構造が形成されることを見いだした。ナノ構造の詳細な断面の評価を行った結果、液滴にAs分子線を照射した際には、(1)液滴の中での結晶化、(2)液滴の縁に起因する結晶化、(3)液滴の外側においてGaとAsの表面拡散に起因する結晶化、という三種類の結晶化過程が存在し、それらのバランスが変化することにより、上記のような様々なナノ構造が形成されることが考察された。また、リング構造ではないが、(100)表面における拡散の異方性に着目し、面内に結合した二重量子ドットの形成も可能であることを見いだした。以上のように、As分子線強度を調節するという非常に単純な過程により、様々な形状のナノ構造を自己形成することに成功した。 また、作製したリング構造に関して、その物性を明らかにするため、単一のリング構造からの発光を顕微フォトルミネッセンスにより測定し、それを理論解析の結果と比較した。その結果、同心二重リングにおいては、内側及び外側のリング中にそれぞれ局在した電子状態が存在することが予測され、実際にそれに対応する発光線が観察された。 これらの結果に関して、論文及び国際会議において発表を行った。
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