1.2006年度は初めに、高品質化に主眼を置き研究を行った。色々な条件で作製したナノ構造の発光特性を比較し、GaAs量子リング構造のサイズ均一性が、従来の量子ドットと比較して著しく高いことを見出した。また、ナノ構造成長条件及びポストアニール条件の最適化を行い、キャップ層成長前の量子リングが400度まで安定であり、さらに、キャップ層成長後のナノ構造が800度の高温アニールに於いても発光特性は劇的に改善するが殆ど形状変化を起こさないことをAFM及び断面TEM観察により明らかにした。次に、これらの結果に基づき実現された高品質、高均一性量子リングのデバイスへの応用を試みた。光励起型レーザーを作製し、低温から室温まで良好なレーザー発振特性を観測する事に成功した。この格子整合系自己形成量子ドット(量子リング)からのレーザー発振の実現は世界初の成果である。 2.量子ドットと量子リングが形成される間の非常に狭い条件下で、一つの液滴から二重量子ドットが自己形成可能なことを新たに見出した。これは、結晶化の際に照射される砒素分子線強度が比較的強いと、形成されるファセットの異方性を反映するためでは無いかと考えている。さらに一個の二重量子ドットのからの詳細な発光特性評価を行い、その結果を電子状態計算と比較し、この二重量子ドットが量子ドット分子を形成していることを示唆する結果を得た。 3.2006度の後半は、基板面方位が液滴エピタキシー法へ与える影響について調べる実験を行った。液滴エピタキシー法では、ガリウムと砒素を別々に供給するため、(311)などの極性を持つ面では成長モードに大きな変化が生じることが期待される。これまでに、Ga安定化面であるA面を用いると、表面拡散が抑制され、超高密度の量子ドットが容易に形成できることを見出した。これらの結果については現在発表準備中である。
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