これまで、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor ; FET)を用いた電位計測方式による新規遺伝子解析技術として遺伝子トランジスタ(遺伝子FET)を提案し、センシング部となるゲート絶縁膜上での種々のDNA分子認識の検出に成功してきた。さらに本課題では遺伝子FETの高感度化を目指して、特に平成17年度ではより多くの電荷を帯電させたナノ帯電粒子-DNA複合体に対する遺伝子FETの電気特性変化について調査した。まず、ナノ粒子に直径5〜20nmの金を使用し、DNAには末端をチオール基修飾したオリゴヌクレオチドを用いてナノ粒子-DNA複合体を作製した。チオール分子を末端に化学修飾したオリゴヌクレオチドは金表面に容易に自己組織化膜を形成すると同時に、DNAは水溶液中で負電荷を有することから、金ナノ粒子を使用することで帯電したナノ粒子-DNA複合体を容易に作製することが可能となった。このように作製した金ナノ粒子-DNA複合体を遺伝子FETのゲート表面に導入し、サンドイッチアッセイ法によりゲート表面でハイブリダイズさせた結果、80mV程度の遺伝子FETの電位応答が確認され、通常のハイブリダイゼーション検出における20mV程度の電位変化と比較すると4倍程度増加することが明らかとなった。これはナノ粒子とDNAを組み合わせることにより、大きな電荷を有するナノ粒子-DNA複合体が形成されるためと考えられる。以上のことから、ナノ帯電粒子-DNA複合体を用いることにより遺伝子FETのシグナル増幅が期待され高感度化の可能性が見出された。
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