本研究は、"表面イメージング法"と"表面ゾル-ゲル法"を組み合わせることによる三次元的にオーダーされたナノ複合材料の設計を目的としている。初年度である本年度は、研究の根幹である、"光照射によって位置選択性を発現するナノシートの作製"、並びに"作製したナノシート表面への有機低分子化合物の付加"について研究を行った。まず光反応性を有するシランカップリング剤として、3-(o-ニトロベンジルカルボニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン(ONB-APS)の合成を行った(収率30%)。得られたONB-APSとジルコニアアルコキサイドを1:10の割合でエタノール中に混合させ、これの表面ゾル-ゲル反応を石英基板やシリコンウェハーなどの基板上に行うことにより、光反応性を有する金属酸化物のナノシートを得た。得られた薄膜の厚さは、10サイクルのゾル-ゲル反応で4nm程度であった。この薄膜に365-nm光照射を行うことにより、ONB-APSのo-ニトロベンジル保護部位が外れ、1級アミノ基が得られる。この光反応について、赤外級光度スペクトル測定ならびに可視紫外吸光スペクトル測定により確認した。また接触角測定においては、光反応に伴う薄膜の接触角の減少が確認された。光反応によって得られた1級アミノ基は反応性に富み、様々な化合物と反応をし、共有結合を形成する。これにより有機低分子化合物を光照射部にのみ固定化することが可能となる。例えば、フォトマスクを用いて選択的に光照射を行った薄膜について、フルオレスカミン溶液に浸積したところ、光照射部のみのフルオレスカミンの固定化(=光照射部のみからの発光)が、蛍光スペクトル測定ならびに蛍光顕微鏡測定により確認された。このように光反応性のシランカップリング剤を用いることにより、セグメント化したナノシートを得ることができた。今後は、このナノシートの積層化を行う。
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