本年度は、電気伝導特性測定系の構築、エレクトロマイグレーション法によるナノギャップ電極の作製条件の確立、および静電気力によるギャップ電極間への無極性分子のトラップ実験を行った。電気伝導特性の測定系は、直流の電流-電圧特性だけでなく、交流印加による微分コンダクタンス測定、非弾性トンネルスペクトル測定が可能なものを構築した。また、エレクトロマイグレーション法によるナノギャップ電極の作製条件を確立し、ギャップ間隔数nmの電極を効率良く作製することができた。作製したナノギャップ電極にクーロン島としての機能が期待されるポルフィリン誘導体を導入し、その電気伝導特性を11Kで測定したところ、単一電子トランジスタ特性(クーロンダイアモンド)を得た。得られた特性は、分子軌道計算や光学測定から知られるポルフィリン分子の物性を反映しており、このことから単一分子トランジスタの作製に成功したものと考えられる。その他、ワイヤ状分子を用いて同様の実験を行い、分子由来と見られる電気伝導特性を得ることに成功している。これらの分子は、長さ2nm程度の一般的なものである。したがって、単一分子の大きさを持つ分子をナノギャップ電極へ架橋させた分子接合の作製条件が、ほぼ確立できたと考えられる。 次に、静電気力によるギャップ電極間への分子トラップの条件を探るため、観察が比較的容易なカーボンナノチューブを用いて実験を行った。ギャップ電極間へ1MV/m程度の電界を印加し、カーボンナノチューブを電極間に配向、トラップさせることができた。その様子は電子顕微鏡および原子間力顕微鏡による観察で確認した。これまでに、その電気伝導には、電界効果トランジスタ特性を得ている。
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