今年度は、ポルフィリン誘導体を用いた分子接合にっいて、素子作製に関する統計データと、対応する電気伝導特性をまとめ、その成果を国際会議(SSDM2006、ICNME2006)で発表した。内容は論文誌(英文)に掲載される予定である。また、ゲート絶縁層上に形成したナノギャップ電極間をカーボンナノチューブ(SWNT)やオリゴチオフェン誘導体(3T)で架橋させることによりトランジスタ構造を作製し、その電気伝導特性および温度依存性を11Kから300Kの間で測定した。 まず、SWNTを測定対象として試料を作製した。SWNTを微量分散させた溶液をソースーゲート電極間に交流電圧(正弦波、5MHz、1.OV_<p-p>)を印加しながら滴下し、乾燥させた。その結果、単一もしくは少数のSWNTがナノギャップ電極間を横切るように架橋した構造を作製することができた。試料の電気伝導特性を測定したところ、低温で単一電子トランジスタ(SET)特性を得た。電気伝導特性は顕著な温度依存性を示し、SET特性は100K程度で消失した。室温ではドレイン電流-ドレイン電圧特性は線形で、ゲート電圧に依存しなかった。したがって、ナノギャップ電極間にトラップされたSWNTは金属性で、電極との接触において接合容量が形成され、低温でクーロン島として機能したものと考えられる。これらの成果を国際会議(ASIANANO2006、JAPANNANO2007)で発表し、論文としてまとめた。 次に、同様の手法を一般的な低分子材料に応用するため、3Tを用いてナノギャップ電極を架橋させることを試みた。作製した試料の非弾性トンネルスペクトルを11Kで測定したところ、3T特有の分子振動と対応させることができた。すなわち、3Tをナノギャップ電極間にトラップすることができたものと考えられる(JAPANNANO2007で発表)。
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