基板上に原料となる金属などの物質を含むガスを流し、そこに収束した粒子線や電子線を照射することでビームを当てた所にのみ局所的に所望の物質を蒸着する手法を収束イオンビーム化学気相成長(FIB-CVD)または、電子線誘起蒸着(EBID)という。これらの手法は既にいくつかのグループによって研究されており、リソグラフィーで用いられるマスクの局所的な補修や、電界放射銃のチップへの応用の試みなどがなされている。しかし、この手法によってナノ構造を作製するには、電子線によって分解し、かつ適度な蒸気圧を持つ原料ガスが必要であり、任意の物質によってナノ構造を作製することは困難である。 本研においては、粒子線による研磨と組みあわせることで、電子線誘起蒸着では適切な原料ガスが存在しないために作製困難な物質によるナノ構造作製を目的とする。具体的には、基板に対して作製したい形状を電子線誘起蒸着によってナノマスクとして蒸着し、それを粒子線により研磨することで、あらゆる物質での名の構造の作成をこれまでにないサイズで実現する。 平成18年度は、ヘテロ構造をもった基板に対して本手法を用いることで量子ドット構造を作製することを目標とし、作製された試料をTEMを用いて観察し、加工精度やプロセスダメージの評価を行った。その結果、ヘテロ構造を持った基板に対しても、同様の分解能での加工が可能であることが確認された。また、EBIDによって作製されたマスクに対してウエットエッチを施した試料との比較によってダメージを評価した結果、ほぼ同等のレベルであることが確認された。
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