本研究では、超大規模な錐計画問題を実用的な計算資源でロバストに解くアルゴリズムの開発を目的とする。そのため、本年度は以下のような研究を行った。 1.自由変数を持った錐計画問題に前処理を施し、主双対内点法をロバストに実行させる手法を提案した。既存の手法が錐計画問題を退化させていたのに対し、本手法は問題を退化させないため、数値的安定性が向上する。また、前処理の過程において、主双対内点法を効率よく計算させるためには、マトロイド理論に基づいたヒューリスッテックな基底の選び方が有効であることも示した。さらにこの前処理は、問題のサイズを小さくするというメリットも生む。これらの研究成果をまとめた論文を、現在学術誌に投稿中である。 2.まず、数値解析分野においてロバスト性があるといわれている手法の現状について調査し、それらが主双対内点法に対し有効であるかどうかを検討した。それらを踏まえ、コンディションが悪い錐計画問題を解く際、主双対内点法が破錠しないような計算スキームを提案した。数値実験の結果、この方法がロバスト性を向上させることを確認した。しかしながら、計算効率を大きく悪化させるという現実もある。そのため、なるべく計画時間をかけず尚且つ計算精度もでるような工夫を多々行った。現在、これらの研究成果を学術誌に投稿する準備中である。 これらの成果について、2005年10月に行われた日本オペレーションズ・リサーチ学会主催の第17回RAMPシンポジウムで招待講演を行った。上記の研究成果を踏まえ、プログラミング言語C++を用いて、錐計画問題を主双対内点法で解くソフトウェアを開発中である。完成後には、多くの人がこのソルバーを利用できるような環境を整備する予定である。
|