地球環境問題はますます深刻化し、モノづくりを行う製造企業は、製品の組立てを行う組立生産システムと、リユース・リサイクルのために回収した製品を部品に分解する分解生産システムの両者からなる循環型生産システムを構築し、環境に調和しかつ経済的にも成立させねばならない。システム効率を左右するモノの流れは組立と分解で対称的だが、研究代表者は、リバース・ブロッキングという生産性の減少を招く分解生産システムに特有な現象を発見している。 本研究では、利益やリードタイムなど効率性の観点から、組立生産システムのみならず分解生産システムを研究し、製品ライフサイクルを考慮しながら対称的かつ個性的な両システムをモデル化して、入出力間隔、作業能力・バッファ編成などシステム設計を行い、さらには両システムを統合してリバース・ブロッキングのある循環型生産システム全体のモデルを提案し、設計基準を明らかにする。 本年度は、循環型生産システムを構成する分解生産システムと組立生産システムそれぞれについて研究を行った。分解生産システムでは、先頭の工程に必ず存在して循環型生産システム全体の効率性をも決定する仕分け工程に着目し、分解生産に特有なリバース・ブロッキング現象のあるネットワーク解析のために、定式化と一部の数値計算を行った。組立生産システムでは、代表的な組立方式であるライン型、セル型とフレキシブル型を取り上げ、需要変動のもとでいずれのシステムが効率的であるかを比較・整理して知見としてまとめた(投稿中)。ライン型については、遺伝的アルゴリズムなどシミュレーション最適化を用いた確率的な混合ラインのための設計法を提案し、国際会議と国内学会で成果発表を行った。 また、欧州や国内の先端研究・実践拠点等(独・伊計6箇所、国内4箇所)を訪問して情報収集を行うとともに、これまでの研究成果や今後の研究計画を発表して議論を行った。
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