研究概要 |
2005年度の研究では,企業が直面するリスク(不確実性に起因する損失)を考慮した企業の潜在的財務指標を推定するための理論モデルを構築した. まず第1に,次の2つの論文をジャーナルで発表した.KERで発表した論文では,企業が経済活動を行う市場が寡占市場である場合,企業間の相互依存関係から生じるリスクを考慮に入れた企業の投資プロジェクト評価モデルを構築した.エコノミアで発表した論文では,企業が経済活動における市場の情報を完全には観測できない場合,情報の不確実性から生じるリスクを考慮にいれた企業の投資プロジェクト評価モデルを構築した. 第2に,企業内のエージェンシー問題(所有者と経営者の利害対立)を考慮した企業の投資プロジェクト評価モデルの研究を進めており,既存研究を拡張した理論モデルを構築し,現在は数値計算を行っている.なお,この論文を,カナダ・オタワで開催されたINFORMS Applied Probability conference,オーストラリア・シドニーで開催されたQuantitative Methods in Finance Conferenceで発表した.発表において頂いたコメントを考慮した上で,来年度中にワーキング・ペーパーとして発表し,海外ジャーナルに投稿する予定である. 最後に,2006年1月から3月までシドニー工科大学(University of Technology Sydney)の客員研究員として当該大学に中期滞在し,当該大学のChiarella教授と企業の投資プロジェクト評価モデルに関する共同研究を進めている.そして,シドニー工科大学に滞在中に単著で執筆したワーキング・ペーパーを海外ジャーナルに投稿した.
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