研究概要 |
電気機器の高電圧化および高電界化が進み,その安全対策はきわめて重要な課題である.特に火災原因として知られる被覆電線などは,燃焼にあずかる高分子材である被覆部と心線である金属導電体とが極めて異なる熱伝導特性を有するため,思いがけない燃焼形態をとる.本研究では,電線火災を想定したモデルの下で燃焼実験および数値計算を行い,その特性把握を試みた.主に行った研究テーマは以下の通りである. 1)過電流による電線着火特性の把握(実験および解析) 2)電線上の火炎燃え広がり現象(実験および解析) 過電流による自発着火実験では,過熱電流の低下に伴い着火遅れ時間が延びるが,急な加熱の場合と緩い加熱の場合で,自発着火の起こり方が異なることを見出した.特に微小重力場を用いて流れ場を制御した実験においては,弱い電流ほど着火時の被爆範囲が広がり,危険となる可能性があることを示した.燃え広がりの実験は,特に過密な電線配置であり且つ安全性を求められる宇宙船や飛行機などの低圧雰囲気状態を模擬してデータ取得を行った.その結果,通常は低圧になるほど燃焼しにくいと考えられていたのが,逆にある低圧部において常圧雰囲気下よりも燃え広がり速度が早くなる,すなわち火災危険性が高まる,あるいは防災基準が地上のものを適用できなくなることを世界で初めて明らかにした.この原因については次年度にさらなる検討を行う予定である.解析は宇宙船内部を模擬した微小重力環境に特化した想定で行い,微小重力場で顕著となる火炎からの輻射が燃え広がり現象にどの程度影響を与えるのか,系統的に調べた.結果,輻射モデルに依存して現象が大きく異なり,実際の現象を再現するためには輻射モデルの洗練が重要であることを示した.
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