平成17年度は以下の研究を進めた。 (1)米国におけるGISを活用した危機対応に関する調査 2001年9月11日の同時多発テロ事件以降Homeland Security省の創設された。2001年9月11日のテロ事件、2003年南カリフォルニアで発生した大規模森林火災の2事例は危機対応におけるGISの実践的活用を示した事例であり、従来の自然災害中心の防災対策では不十分であることが明らかになった。これらの成功事例からマルチハザードを対象とした危機対応にGISを活用するためには、時々刻々変化する被災地の状況を把握すること(状況把握、意思決定支援)、危機対応支援ツール等を利用し戦略的・効果的な災害対応を支援すること(緊急対応支援)、状況把握とともに将来的な危機の推移を予測すること(将来予測)、防災関係機関間や市民に効果的に情報を提供すること(情報提供)、事前対策から応急対策、復旧・復興対策といった時間推移にともなう危機対応業務の変化を支援可能な一元化された包括的な情報共有システムを構築すること(情報共有)が重要であることが明らかになった。 (2)日本におけるGISの活用状況とGISを活用した危機対応支援の方策 先駆的に統合的なGISの活用を進めている自治体の考え方・プロセス・失敗例・成功例を具体的にヒアリングした結果から、これまでの自治体におけるGISの導入はGISのヘビーユーザー(土木、都市計画、道路等)を中心とした測量技術中心の手法であり、初期導入に数億円のコストを費やしていた。他自治体では同様の方法を進めることは困難であり、京都府宇治市の協力を得、今後の自治体におけるGISを活用した危機対応支援の方策を検討した。その方策どは、データ、データベースや情報システムだけではなく、組織や人材を考慮した持続可能なEnterprise GISである。特に、これまでGISと無縁に思われていた部局の参画、部局間の連携が可能な仕組みづくりといった自治体の業務に根ざしたGISの活用方策を実践的な取り組みに基づき示した。 (3)2003年新潟中越地震におけるGISを活用した支援活動 新潟中越地震発生後、最も甚大な被害を受けた小千谷市では市内の建物の被災度を全数調査する家屋被害認定調査を実施した。調査業務を効率化するためのモバイルデバイス・PDAとGPSユニットを使用したデータ入力アプリケーションのプロトタイプを開発した。被災地での支援活動で得られた教訓をもとに緊急被害調査業務支援システム構築のための要件定義を行い、緊急被害調査業務の流れを整理し、緊急被害調査業務支援システム(POS)を構築した。緊急被害調査における情報処理は、被災現場でのデータ入力と市役所等に戻ってからの情報処理に大きく分けられ、調査業務の全体像を包括した情報処理モデル及び情報システムを構築した。
|