虹彩認証装置の実環境下における認識性能を評価するために、実環境を想定したフィールド実験を実施し虹彩認識率を調査した。一方、人工虹彩を用いたなりすましを排除するための生体判定アルゴリズムを開発するために、虹彩領域の輝度変化による生体判定閾値を明らかにした。さらに、虹彩認証装置の小型化・可搬性を実現するために、虹彩画像を取得するアルゴリズムをFPGAおよび小型CPUボードに実装した。 1.実環境における虹彩認識率の調査 本システムの実環境における虹彩認識率を調査するために、16人の被験者で実環境を想定したフィールド実験を実施した。実験の結果、等誤り率が7.24%となり、条件を一定とした撮影環境のもとで取得した虹彩画像を用いた場合の等誤り率(1.81%)に比べて認識性能が低下した。今後、虹彩認識率を向上させるために、新たな虹彩コード生成法の開発が必要である。 2.生体判定アルゴリズムの開発 これまで、微弱なフラッシュ光を目に照射することで誘起される瞳孔反応時の瞳孔径変化を計測することで、偽造と生体を識別していた。この方法では、認証に用いる生体情報(虹彩)と、生体検知で用いる生体情報(瞳孔)が異なるため、偽造への脅威が存在していた。そこで、認証に用いる生体情報と同じ部位である虹彩領域の輝度変化を計測することで生体を検知する方法を開発した。数人の被験者で実験を行い、生体と偽造を識別するために最適な各種パラメータ値および判定基準を明らかにした。 3.虹彩領域抽出アルゴリズムのFPGAおよび小型CPUへの実装 虹彩認証装置の小型化・軽量化を図るために、カメラからの画像取り込みから虹彩領域抽出までの各種アルゴリズムをFPGAおよび小型CPUボードに実装した。実装したアルゴリズムの処理時間は、生体検知が可能な処理速度の条件を満たすことができた。一方、虹彩領域の検出精度については、ラベリング時に求めた周囲長に誤差を含んでいるために瞳孔径に誤差が生じ、抽出した虹彩領域にも誤差が生じた。今後、この問題を解決するために、垂直および水平方向に対する黒画素のヒストグラム分布を利用した瞳孔径計測法など、より高速で検出精度が高い瞳孔径検出法を導入する必要がある。
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