本年度は、まず、昨年度まで開発してきた空間的クラスタリング手法が、より一般的な場合でも利用可能であるかどうか理論的に検討した。昨年度までのものは、メッシュデータというごく限られた形式の空間データにのみ適用可能なものである。しかし、ある条件を満たすように、空間オブジェクト間の隣接関係を定めることで、より一般的なベクター形式データに対しても、この手法が利用できることを示した。 次に、空間的クラスタリングアルゴリズムを実装したプログラム開発を行い、数値例および地価公示データに対する適用を行った。そして、幾つかの好ましい性質を満たす部分領域への分割が得られることを明らかにした。より具体的には、第一に、群内分散によって部分領域の均質性を評価したとき、群内分散が非常に小さく押さえられていることを示した。第二に、隣り合う部分領域は、(属性値の点でみて)顕著に異なった性質を持ち、またその顕著さは統計的に有意であることを示した。 また、既存研究のサーベイをさらに徹底し、より包括的なレビューに基づいた上で、本研究の位置づけや新規性を明らかにした。特に、地理学分野においては、AZP (Automatic Zoning Procedure)と呼ばれる空間的クラスタリング手法があるが、この手法との優劣比較を行った。そして、本研究で開発した手法は、局所最適な部分領域への分割ではなく、大局的最適であるという意味で優れていることを示した。また、建築・都市工学においては、各種情報量規準を援用し、空間的クラスタリングを行う手法が開発されてきた。そして、この種の手法との比較したとき、本研究で開発した方法は、ノイズ状の微細な部分領域を生み出しにくいという点で優れていることを示した。 以上の研究内容をまとめた内容は、平成18年度内には公刊されていない。しかし、地理情報科学分野雑誌に投稿したものが、すでに受理されており、平成19年度には、審査付き学術論文として出版されることが決定している。
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