研究概要 |
本年度は,プラント運転における監視時の注目行動に関する教示・訓練の内容とその意義等に関して,構築・改善したシミュレータによる実験に基づいて検討した.具体的には,異なる教示を与えた被験者による異常同定作業時の認知・情報処理過程を実験で調査した.被験者の認知・情報処理過程を把握するにあたっては,先行研究で提唱したメンタルアルゴリズム解析を用いた.また,異常同定作業時の思考に含まれる様々な認知的エラー(判断エラー)を抽出し,教示との関連性について人間行動形成要因の考え方に基づいた分析を試みた. 以上の結果,判断エラーが発生する過程と,その判断エラーを引き起こす要因の因果関係をある程度理解できた.また,教示方法に含まれる要因が判断エラーに及ぼす影響を把握できた.例えば,教示過程において被験者が得た知識の分類や整理が不十分であったことが,類似した知識との混同による判断エラーに繋がることなどが明らかになった.そこで,判断エラーを引き起こすような教示内容を特定し,円滑な思考を促す教示方法および内容を検討した.具体例を挙げると,判断エラーが生じやすかった局面での適切なパラメータ検索方法や知識・経験の選択方法を教示することを訓練に盛り込んだ.また,画面に呈示された情報を吟味して異常事象をある程度絞り込んでからパラメータ検索を開始するように教示・訓練した.このような訓練により,画面に呈示される個々のパラメータを的確に認識し,複数のパラメータ値を比較・観察した上で,より多くの情報に基づく状況判断を促す,と考えられる. 以上のような,教示訓練内容および方法について,検証実験を通して有効性を検討した結果,判断エラーの件数が顕著に減少し,探索に方向性がない認知的状態が続く傾向が弱まることが判った.即ち,有効性が確認できたと言えよう. 次年度は,これらの知見に基づいた実験を行うこととしたい.
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