研究概要 |
本研究の目的は,地震時の高速道路車両の走行安定性について検討を行い,地震動が走行車両に与える影響を明らかにすることで,高速道路ネットワークの地震時安全性の向上に貢献することである. 日本道路公団が行った2003年5月26日に発生した宮城県沖地震時に高速道路運転者へのアンケート結果を分析し,地震動強さと運転者の反応の関係を評価した.その結果,計測震度4.0未満の区間を走行していた運転者のうち,地震に気づいた運転者は4割に達しなかったが,計測震度が4.0以上になると8割以上の運転者が地震を認識するようになった.地震を認識した運転者の行動は,路肩に停車したもの,減速したもの,そのまま走行を続けたものなどに分類された.走行車線上に停車するというかなり危険な行為をした運転者も複数みられたことから,地震動が車両の走行状況に無視できない影響を与えることが明らかとなった. 一方,都市内自動車専用道路では,その土地利用の制約などが影響して,平面道路部分よりも高架橋などの道路構造物が占める割合が大きくなっている.例えば,首都高速道路の全長281.0kmのうち80%以上を高架橋などの道路構造物が占めている.そこで,典型的な道路構造物の例として,5径間連続鋼I桁橋を用いて道路構造物の地震応答特性が走行車両に与える影響を検討した.橋脚の支承条件を適当に変化させ,構造物の固有周期と車両応答量の関係について評価した.その結果,入力地震動の周波数特性や構造物のじん性率などが走行車両に与える影響について,より定量的な検討を行う必要があるものと思われた.
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