本研究では、海岸林による津波外力および被害の定量的軽減効果の評価と現地適応性を検討する手法の開発を目的としている。 平成17年度は、海岸林の条件を変化させた事による津波減衰効果への影響評価を行った。評価は津波数値シミュレーションにより行った。海岸林は樹木の混み具合や枝葉の高さをパラメータとする抵抗モデルとして、津波防潮堤は堤防高さと越流水深をパラメータとした越流条件として、津波氾濫シミュレーションモデルに取り込んだ。津波の氾濫に影響を与えるこれらのパラメータの値を変化させ、津波減衰効果を検討した。海岸林の混み具合や枝葉の高さについては、実際の海岸林の計測結果を参考に値を設定した。 その結果、津波の氾濫に対して、防潮堤により津波流入量自体が減少され、さらに堤防を越える越流津波の流速が海岸林により低減されることにより、越流をする高さの防潮堤であっても海岸林のみの条件よりも効果的に津波の氾濫域を低減できることがわかった。また、海岸より陸に向かって高くなる地形を遡上したあとの津波は、海岸線に近くなるほど海に向かう戻り流れの流速が大きくなるが、防潮堤と海岸林を組合せて配置することにより、戻り流れの勢いが大きく弱められることもわかった。戻り流れは、人が沖へ流されたり海中への漂流物を拡散させたりすることにより、被害を拡大させる要因となるため、対策を考える上で重要な項目である。このような海岸林と防潮堤を組み合わせて配置することによる多段的な津波対策は、津波被害の軽減に効果的な手法であることがわかった。
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