自然力の持つ津波減災効果を活用して津波災害を軽減することをめざし、平成18年度は現地適応における課題を整理し実践的な活用手法にむけての検討を行った。 これまで検討してきた数値計算を用いた物理的津波減衰効果の様な防災技術的検討だけでなく、実際の海岸林の現地適応時においては、行政、地元住民、NGO、国際関係機関などの多くの関係者に加え、海岸工学、森林学、生態学、危機管理等の様々な側面から総合的な検討によって現地適応がなされる必要がある。そこで、FAOによる海岸林の持つ海岸防災の役割についてのワークショップに参加し、インド洋津波後の海岸林管理に携わる専門家や防災行政担当者等の専門家等に対して、これまでの定量的津波減衰効果の研究成果を提示するとともに、関係者との議論から、現地適応にむけての課題の整理を行った。その結果、より簡便な津波減衰効果の評価手法が必要であること、現地適応事例の集約と情報共有が必要であるとの意見が得られた。また、現地の地域特性に合わせて様々な津波対策との複合的な活用手法が必要とされ、代表的なケースにおける事例から具体的な手法の提案が有効であることが分かった。 また、2006年インドネシアJAVA島中部津波において、海岸部の植生や自然地形によりその被害の状況が異なっていることが報告されている。現地の研究者と協力し海岸林と津波についての現地調査を行うとともに、現地での海岸防災における海岸林利用の可能性についての検討を行った。現地調査の結果、海岸林により漂流物(船舶)阻止の事例や砂丘による津波の内陸進入阻止の事例等が確認された。また、現地地方政府により盛り土による堤防と周辺への海岸林の植林による対策が実施されていた。これらの対策には、効果の検討はされておらず、定量的な評価・検討により被害軽減をする必要がある。 なお、これらの成果は、IUGG(International Union of Geophysics and Geodesy)において報告予定である。
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