研究概要 |
今年度は,前年度において開発したマルチパラメータ広帯域レーダを運用し,システムの安定化を図ると共に,その評価を実施した。広帯域レーダは,送信に80MHzといった広帯域信号を用いてデジタル処理を行う点が,他のレーダと異なる点であり,これにより,低高度のレーダ反射因子を詳細に観測,パルス圧縮技術を用いて低出力かつ高分解能な機能を実現したレーダである。観測した低高度のレーダ反射因子とディスドロメータによって測定された雨滴粒径分布から算出した等価レーダ反射因子との比較を行った結果,相関係数が0.98,標準偏差が約1.5dBz程度と,従来の大型レーダに比して,格段に精度の高い計測を行うことが,定量的に証明された。また一方,本レーダのようなデジタルパルス圧縮処理を行うレーダの場合,レンジサイドローブとSNロスのトレードオフが問題となる。この問題に対して,今年度は,送信波形及びパルス圧縮の際に施す最適な窓関数を,ピークサイドローブ,レンジサイドローブ,SNロスの観点から,選択した。その結果,1mm/h以上の降雨強度が,-3dB程度のSNロスで,観測可能になった。さらに,レドームの製作と,長期間の運用が可能になるよう,RAIDシステムを導入し,HD容量の大型化を行った。今後,観測を継続して行い,レーダの改良と気象現象解明に寄与していくと共に,同レーダの製品化を目指して,基本設計を実施していきたいと考えている。
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