研究概要 |
雪崩の発生条件に関するデータを蓄積するため,妙高の幕の沢において雪崩のモニタリング観測を行なった.幕の沢は上流ほど傾斜が急になり,源頭部では35〜40度の斜度をもつ.ここでは大規模な雪崩が多発していて,これまでにも流下距離が2000〜3000mに達する雪崩がしばしば観測されている.幕の沢には雪崩の発生時刻や規模を記録するために,雪崩発生検知システム,地震計およびビデオカメラを設置した.雪崩堆積域末端から約300mの平坦な場所では降水量,積雪深,気温を1時間間隔で測定した.また,積雪断面観測を冬期間に月1回行なった. 2005年4月に回収した雪崩発生検知システムのデータから,同年2月26日21時57分に雪崩が発生したことが判明した.この日の積雪深は337〜434cm,日中も気温が-7℃以下であり,午後からの強い降雪が22時には50mmを超えた.粘性圧縮モデルで推定した21時の積雪安定度は上部で1.0未満であったことから,急増した新雪層の崩壊による乾雪表層雪崩と考えられる.3月8日の断面観測でも顕著な弱層は認められなかった.また,この雪崩では明瞭なデブリが残らなかった.雪崩発生検知システムのデータからも,センサーのポールが雪の衝突によって振動する間もなく,一撃で倒壊したことが伺えた.低密度の雪が高速で流下する煙型雪崩だったと考えられる.融雪が進んだ雪面に,雪崩によって運ばれたと考えられる木の枝が現われた.それらは,幕の沢源頭部から最大約2400mの地点まで達していた. 一方,積雪の含水率とせん断強度の関係を明らかにするために,含水率計の比較測定を実施した.その結果,誘電方式含水率計も従来の熱量方式と同等の測定値を得られることが確かめられた.
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