2004年9月5日19時07分および同日23時57分に、紀伊半島沖で気象庁マグニチュード6.9(前震)および7.4(本震)の地震が、北東-南西方向に約40kmの距離と約5時間の間隔をおいて相次いで発生した。一連の地震に伴い、伊豆諸島から四国にかけての太平洋沿岸で最大0.9mの津波が観測されたが、津波は室戸沖に設置してある海洋研究開発機構の海底ケーブル式海底地震総合観測システム1号機(以下、室戸システムと呼称)の海底水圧計PG1(水深2340m)とPG2(同1530m)でも捕らえた。本年度は、紀伊半島沖地震の沖合津波観測のリアルタイムデータ処理の検討および海底ケーブル式リアルタイム津波観測が津波防災上有用であること確認した。まず観測データから津波波形を抽出することを行った。海底水圧計で観測されるデータは1s間隔でサンプリングされているため、オリジナル波形では地震波ノイズが卓越するため津波の到達は認識できない。そこで60sの移動平均をオリジナル波形に施して、地震波ノイズを除去した。前震、本震ともに移動平均によって短周期の地震ノイズが除去されて、津波がそれぞれ19時25分頃、翌日00時20分頃に室戸システムを伝播している状況が確認できた。水圧1hPaは1cm水頭に相当するので、その振幅は前震では4cm相当、本震では7cm相当の津波を観測したことになる。一方、気象庁の報告によれば、前震と本震による津波は室戸システムに最も近い室戸岬にそれぞれ19時48分、翌日00時37分に到達した。その振幅は0.5〜1mとなっている。すなわち室戸システムでは、室戸岬に到達するおよそ20分以上前に津波を検知することに成功した。さらに沿岸で観測された津波は、沖合の観測よりも約10倍の振幅を持っていることが明らかとなった。また、震源断層から沖合での津波シミュレーションを実施して観測データと比較した結果、両者は一致することを確認した。
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