研究概要 |
ブドウ球菌属を対象に、垂直・水平伝播を網羅的に同定することによりゲノム進化を解明した。Staphylococcus aureus, S. epideriDidis, S. haemolyticusの3種10株の網羅的比較により、ブドウ球菌の種分化は、染色体の中でも複製起点の周囲の領域(oriCenviron)が多様化することによりもたらされていることを明らかにした。この現象は、新たにゲノム解読されたS. saprophyticusにおいても確認された。ブドウ球菌属にはメチシリン耐性などをもたらすSCCmecという水平伝播因子がある。SCCmecはoriCenviron中の複製起点に近い側に含まれている。oriC environの形成については、SCCmecの関わりが推察されるが、まだ解明できていない。一方、ブドウ球菌属に最も近いBacillus属においても、複製起点の周囲の領域が種により異なっていることを見つけた。Bacillus属には、SCCmecに類似する領域も存在するが、それはoriC environ類似領域とは複製起点を挟んで反対側に位置していた。その他の細菌においては、複製起点の周囲での種の多様性は確認できなかった。このことから、oriC environはブドウ球菌あるいはその近縁に限られた、種分化の仕組であると結論づけられる。これらの成果について、12th International Symposium on Staphylococci and Staphylococcal Infections(マーストリヒト)において発表した。またゲノム進化解析の手法についても出版している(Ji、Yindou編Methicillin-ResistantStaphylococcus aureus(MRSA)Protocols、Humana Press)。
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