哺乳類のDNA塩基にメチル基が付加される化学的塩基修飾(メチル化)は、個々の遺伝子の発生段階・各組織特異的な機能発現制御、ゲノム刷り込み現象、雌におけるX染色体不活化、そしてゲノムに侵入したウイルスの不活性化による生体防御など、哺乳類の生命維持に不可欠である。このため、約3万個からなるヒト各遺伝子の転写制御領域(プロモーター領域)のメチル化状態を各組織別に調べることは、ヒトゲノム配列決定後の一大研究となっている。このため研究代表者は、ヒト21番染色体上遺伝子の約半数に相当する149個のプロモーター領域を計算機により推定し、独自に考案したHM-PCR法を用いて、これらのメチル化状態をヒト末梢血由来ゲノムにおいて網羅的に調べた。 今年度は、この研究をさらに発展させ約250個からなるヒト21番染色体上の全遺伝子のプロモーター領域のメチル化状態を、同一遺伝子が持つ複数のプロモーター領域も含めヒト各組織別に同定し、メチル化ボディマップを作成することを目的とした。まずヒト21番染色体上の91個の遺伝子のプロモーター領域(同一遺伝子が持つ複数の転写開始領域も含む)を既存のデータベースDBTSSより取得した。次に、既存のフリーソフトウエアであるPrimer3を用いて各プロモーター領域にHM-PCR法で用いるプライマー配列を設計した。このうち50個のプロモータについて末梢血由来ゲノムを用いてHM-PCRを行いメチル化状態を同定した。また独自に構築したソフトウエアを用いてbisulfite sequencing用のプライマーを上記の91個のプロモーター中90個について設計した。
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