研究概要 |
抗腫瘍性抗生物質エキノマイシンは、二量体型環状ペプチド骨格にキノキサリン-2-カルボン酸が連結したU字型の分子構造を持つ。DNAのマイナーグルーブに二つのキノキサリン環が同時にインターカレーションして生理活性を発現することが報告されている。本申請研究では、まず、放線菌S.lasaliensisからエキノマイシン生合成遺伝子クラスターの全長を取得した。さらに、エキノマイシン生合成に必要な16個の生合成遺伝子を同時に大腸菌で発現させ、エキノマイシンの酵素的全合成に成功した(南カリフォルニア大学、渡辺らとの共同研究、論文投稿中)。次に、生合成遺伝子の解析結果に基づいて、トリプトファンからキノキサリン-2-カルボン酸が生合成される機構を推定した。ここで、トリプトファンのβ位が酸化されたβ-ヒドロキシトリプトファンが鍵生合成中間体となり得る可能性が考えられたので、(2S,3S)-および(2S,3R)-配置の重水素標識体をそれぞれ立体選択的に合成した。生産菌への取り込み実験から、(2S,3S)-配置のβ-ヒドロキシトリプトファンが生合成の鍵中間体であることを疑問の余地なく解明し、キノキサリン系抗生物質の生合成機構について新重要知見を得た(投稿準備中)。キノキサリン環生合成機構の全容解明を進めるとともに、テトラペプチドを環化二量化させマクロ環を酵素反応で形成させる系を確立すべく、非リボソーム依存型ペプチド合成酵素のチオエステレースドメインとその上流のペプチジルキャリアープロテインドメインから構成される2ドメインを部分的に発現し、精製した。ごく最近、この2ドメイン部分発現酵素について、チオエステルの加水分解活性を検出した。また、生合成中間体と予想されるテトラペプチドやそのアナログの化学合成に成功した。
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