多様な生物が生息するサンゴ礁海域は貴重な生態系を形成しており、その保全は重要である。しかし近年、地球環境の悪化や食害生物の異常発生などによりサンゴ礁は急激に減少している。特に、周期的に大発生してサンゴ群集を壊滅寸前の状態まで陥らせている食害生物として、オニヒトデとレイシガイダマシ類が知られている。これら食害生物被害の対策として、多大な時間と予算をかけた人海戦術による駆除が頻繁に行われているが、つねに大被害の事後対策的な駆除に終始することと、人員と予算の関係で長期的な継続や広範囲の守備が難しく、充分な効果が得られていない。本研究は、サンゴ食害生物として知られるオニヒトデやレイシガイダマシ類について摂餌行動刺激物質を解明し、誘引剤として応用することを目指した。 レイシガイダマシ類の誘因物質として、これまでにコモンサンゴの抽出液から摂餌行動刺激物質としてモンチポリ酸類を同定した。今回、銅触媒を用いた末端アルキンのカップリング反応を鍵反応に用いることで、短段階で高効率にモンチポリ酸類を合成することに成功した。実際に実験水槽において、レイシガイダマシ類は合成品に誘引するされることを確認した。 また関連した研究として、養殖アサリを食害する巻貝の一種ツメタガイの誘因物質についても研究を行った。レイシガイダマシ類の誘引剤の研究で確立した方法を用いて、実験水槽においてツメタガイがアサリの海水抽出物に誘引されることを確認した。またクロマトグラフィーにより分離し、数種のアミノ酸が活性画分に含まれることを見いだした。
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