本研究の目的は、あらゆる生物が生きてゆく上で必須な細胞内イオン環境(特に細胞内pHとNa^+濃度)の制御機構を、その中枢に位置するイオン輸送蛋白質(Na^+/H^+交換輸送蛋白質)のイオン輸送メカニズムや制御メカニズムを分子レベルで明らかにすることである。平成19年度は、出芽酵母Na^+/H^+交換輸送蛋白質に結合し、その活性を制御しうる蛋白質分子を探索した。その方法としてNa^+/H^+交換輸送蛋白質の細胞質ドメインをベイトとしたYeast Two-Hybrid法による探索を試みた。 Yeast Two-Hybrid法により内膜型Na^+/H^+交換輸送蛋白質の細胞質ドメインに結合する因子を出芽酵母cDNAライブラリーから探索した。その結果、陽性クローンとして複数のクローンが単離できた。そのなかで、非常に強い相互作用が予測されるクローンからMTH1遺伝子が同定された。また、大腸菌において発現させ精製した内膜型Na^+/H^+交換輸送蛋白質の細胞質ドメインとMTH1蛋白質が直接相互作用することを確認した。これらのことから、出芽酵母に内膜型Na^+/H^+交換輸送蛋白質と相互作用しうる因子が存在し、これらの因子が内膜型Na^+/H^+交換輸送蛋白質の機能を制御していることが示唆された。
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