研究課題
膜蛋白質は、G蛋白質共役型受容体などの薬物受容体の役割を担うものも多く、創薬の観点から極めて重要な標的分子として注目されている。本研究課題において、膜蛋白質の機能・構造解析に有機合成化学の立場から貢献すべく、『膜界面での膜蛋白質の切断反応の開発と応用』を提案し、その開発を行った。すなわち、head groupとして、蛋白質切断の活性中心となるFe(III)-EDTAを有し、tail groupとして飽和脂肪鎖を持つハイブリッド型の人工リン脂質を設計し、その合成に成功するとともに膜蛋白質に対する切断活性について明らかにした。すなわちホスホロアミダイト法により、head groupとtail groupのカップリングを行った後、数段階を経て目的のリン脂質の合成に成功した。この分子を用いインフルエンザウイルスのHAをターゲットに切断反応を検討したところ、期待通り切断反応が起こることがわかった。この際、ウイルス粒子の内部に存在する、matrix protein(M)およびnucleoprotein(NP)の2種類の蛋白質は全く切断されず、本反応はウイルス粒子の外側で選択的に起こることも明らかにしている。同様の条件下、単純なFe(III)-EDTA錯体を用いて同様の反応を行ったところ、切断は起きないことも確かめており、リン脂質誘導体ならではの膜蛋白質切断能を有することも明らかにした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Chem.Commun.
ページ: 4575-4577