プリオンタンパク質(PrP)はプリオン病と関連するタンパク質であるが、その機能は未知のままである。本研究ではPrPの機能を補助受容体機能と予測し、そのリガンド候補分子であるp42との相互作用を解析することを目的とした。 PrPと青色蛍光タンパク質の融合タンパク質(PrP-EBFP : 論文発表済)およびp42と緑色蛍光タンパク質の融合タンパク質(p42-EGFP)を作製し、両分子の相互作用について蛍光エネルギー移動法を用いて明らかにした(論文作成中)。また、p42-EGFPと抗PrP抗体を用いて、PrPとp42の細胞表面における相互作用を蛍光顕微鏡下で観察した結果、両タンパク質が共局在することが分かった(論文作成中)。また、PrPのN末端領域(アミノ酸残基23-124)を遺伝子操作的に削除したΔN-PrPのC末端にEBFPを融合したタンパク質を作製した。その融合タンパク質とp42-EGFPの相互作用について、FRETを用いて測定した結果から、両タンパク質の相互作用が特異的であることが示された。p42は運動神経系において重要な受容体発現を誘導するタンパク質であり、プリオンタンパク質がp42を本来の受容体に運搬する役割を担っていると推測できる結果を得た。本研究で明らかにしたプリオンタンパク質の機能が欠失すると、狂牛病やクロイツフェルトヤコブ病などの海面状脳症を引き起こす可能性があると予測できる。その意味でも、プリオンタンパク質の機能として、現時点で最も可能性が高い結果であると言える。
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