申請者らはCyclinD1の過剰発現によってPDGFRαの発現が上昇し、またE2F1によって転写が活性化される新規のエキソン1βの存在を見出した。これまで明らかにしてきたPDGFRαの転写制御機構はヒトのPDGFRαを用いたものだった。エキソン1βを含むPDGFRαの生理的意義を解析するためにはノックアウトマウスを用いることが有効である。そのためにまず、マウスPDGFRα遺伝子にもエキソン1βが存在し、さらにエキソン1βを含むマウスPDGFRαの転写がE2F1によって制御されていることを明らかにすることとした。ヒトPDGFRαのエキソン1βの塩基配列をもとにマウス・エキソン1βの存在をホモロジー検索したところ、エキソン1βの存在を示唆する塩基配列を見出した。そこで5'RACEとRNaseProtectionアッセイを行った結果、既報のエキソン1の転写開始点下流+768から+1355までの位置にエキソン1βが存在していることが明らかとなった。次にマウスNIH3T3細胞のゲノムDNAより+192より+843の領域をクローニングし、その下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結させたコンストラクトを作製、E2F1によって転写が活性化するかをルシフェラーゼレポーターアッセイによって検討した。その結果、マウスPDGFRαのエキソン1βの転写もE2F1によって活性化した。さらに、EMSAとChIPアッセイによってPDGFRαの+711から+718の領域にE2F1が直接結合することでPDGFRαの転写を活性化させていることが明らかとなった。最後に、内在性のPDGFRαの転写もE2F1によって制御されていることを検討するために、E2F1のドミナントネガティブ変異体を用いた。DNAとは結合できるが転写活性化ドメインを持たないE2F1(1-368)をコードするプラスミドをNIH3T3細胞に遺伝子導入するとエキソン1βを含むPDGFRα蛋白質の発現量が減少した。以上の結果より、マウスPDGFRαのエキソン1βもE2F1によって制御されていることが明らかとなった。
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