2年目に入る本研究では、折しも2006年を通じウィーンで催された「モーツァルト生誕250年」のイヴェントに焦点を当て、現地での取材、資料収集を積極的におこなった。その結果、同様のイヴェントは世界各地で催されたものの、ウィーンにおける企画の特徴として、通常の演奏会やオペラ公演に加えて、次のような特徴が判明した。 1 ウィーン祝祭週間というイヴェントの枠の中で、有名無名を問わずモーツァルトの作品が演奏されたり、それにまつわる新作の初演やシンポジウムがおこなわれたりした。 2 数十年来ミュージカル劇場として使用されてきたモーツァルト縁のアン・デア・ウィーン劇場がオペラ用の劇場に改められ、モーツァルトのほぼ全てのオペラが上演された。 3 モーツァルトをテーマにした様々な展覧会が開催された。とりわけモーツァルトが住んでいた「フィガロ・ハウス」の大規模な改修工事が終了し、あらたに「ハウス・オブ・モーツァルト」として、常設展に加え、企画展もおこなえるスペースが誕生した。 以上のような特徴のあるモーツァルト関係の企画が、(1)オーストリア連邦共和国、(2)ウィーン市、(3)公私の機関(ウィーン国立歌劇場、ウィーン楽友協会等)によっていかに維持運営されているのかについて都市論はもとより、観光学、社会学的見地を交えて研究を進めた結果、モーツァルト・フェスティヴァルを軸に官民の双方が「音楽都市ウィーン」のイメージを作り上げ、それに基づいた観光客誘致を展開していることが明らかになった。
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