1.前年度に考察した、結婚中に蓄積された人的・社会的資本の離婚時における衡平な分割につき、引き続き考察を深めた。離婚給付について鈴木眞次(1992)『離婚給付の決定基準』(弘文堂)が提唱した決定基準を数学的に定式化し、離婚給付が満たすべき条件という観点から批判をおこなった。この研究成果については、East Asian Social Policy Research Network第4回大会(東京大学)で報告した。 2.カップル単位の男女平等について、夫婦ともに正規雇用で就業を継続するライフスタイルを普及させることを目標とするいわゆる「両立政策」が効果を持つか、またライフスタイル中立性という観点から見て望ましいといえるかを検討した。前者については、育児期の女性の正規雇用就業継続率について、日本家族社会学会「第2回全国家族調査」(NFRJ03)による分析をおこない、正規雇用就業継続率は20%程度で近年においても変動が見られないことから、近年の「両立政策」は期待される効果をあげていないことをあきらかにした。後者については、ライフスタイル非中立的な政策は、労働・家族の領域においてメリトクラシーと衡平の原理に則った分配が困難であることの弊害を緩和するための緊急かつ一時的な措置としてのみ許容できることを示した。この研究成果については辻村みよ子・河上正二・水野紀子編(2008)『男女共同参画のために』(東北大学出版会)に第16章として寄稿し、現在の「両立政策」は望ましいものとはいえず、今後とも効果が観察できないなら、より根本的な改革の方向に転換すべきであると論じた。
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