本研究の目的は、日米の性暴力に対する取り組みを、とくに暴力主体である男性に焦点をあて調査し、明らかにすることによって、性暴力に関する心理的・社会的メカニズムを分析し、日本の実情にあった実践的なプログラムを作成することである。また、欧米のマスキュリニティ研究を女性との関係において研究・理解することによって、日本における男性問題研究の進展を図ることであたた。本年度は、「世界女性会議2005」に参加し、各国でどのような取り組みが行なわれているのか状況を調査し、また男性性と暴力をめぐる関係について理論的視野を深めることにした。またニューヨークのコロンビア大学における取り組みについてインタビューをし、アメリカにおける性暴力についての取り組みについて、調査をした。 性暴力主体である男性のアイデンティティとポジションについて理論的考察を深めるために、1990年代におけるジェンダーの問題の複合性をめぐって、「アイデンティティとポジショナリティ」についての理論的検討を行なった。構造のなかで占めるポジショナリティと、本人にとっての自己同一性であるアイデンティティがどのように連関しているのか、理論的に検討したのである。また男性性の葛藤のなかで引き裂かれた悲劇的なケースとして、ジョン・マネーのジェンダーの可変性の実験として有名な双子の実験について検討し、「ブレンダの悲劇が教えるもの」にまとめた。さらに今後は、研究会などを行い、理論的視野を広げ、実際の取り組みについて調査を行っていく次第である。
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