本研究の目的は、日米の性暴力に対する取り組みを、とくに暴力主体である男性に焦点をあて調査し、明らかにすることによって、性暴力に関する心理的・社会的メカニズムを分析することであった。さらに、欧米のマスキュリニティ研究を女性との関係において研究・理解することによって、日本における男性問題研究の進展を図ることをめざした。 今年度は、ボストンでのアメリカ社会学会に参加し、アメリカにおける性暴力の実態(とくにホームレス女性に関してなど貧困との関連を含む)、性暴力への取り組み、セクシュアリティ、ジェンダー理論についての理解を深めた。 2008年度の成果、「アメリカ社会の中での男性と女性」では、アメリカ社会において、女性や男性のジェンダーがどのように形成されているのか、前年度までの取り組みをもとにして、日米の比較を行ったものである。その際、とくに男性にかかる「男らしさ」のプレッシャーに焦点を当てて、ジェンダーを分析した。 「1985年のジェンダー : フェミニズム・ネオリベラリズム・ニューアカデミズム」では、現在の日本のジェンダーの新しい体制の分岐点を1985年に求め、理論的.歴史的に考察した。男性が世帯主となって家族を支えるという家族体制を支持しながらも崩していくトレンドが起こったのが1985年であり、現在は非正規雇用化の流れのなかで、ジェンダーは再編成されていることを明らかにした。 また、武蔵野市男女共同参画推進市民会議に参加し、暴カへの取り組みと女性の健康のワーキンググループにおいて、これら調査の結果を踏まえ、『武蔵野市男女共同参画推進市民会議報告書』をまとめた。
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